AtCoder Beginner Contest 214 - ABC 214 G - Three Permutations の解法です.
解説ACです. 公式解説 も参考になりましたが,それだけでは解答は作れませんでした. kmjpさんのブログ が助けになりました.ありがとうございます.
問題へのリンク
https://atcoder.jp/contests/abc214/tasks/abc214_g
問題概要
$1, \ldots, N$ の順列の全体を $\textrm{Perm}$ と書く. $p, q \in \text{Perm}$ が与えられる. 条件「$x = p(i)$ または $x = q(i)$」を,$\text{Coi}(x, i)$ と書く ことにする. $r \in \text{Perm}$ に対して, $C(r) := \{ i \in [1, N] \mid \text{Coi}(r(i), i) \}$ とする. 集合 $\{r \in \text{Perm} \mid C(r) = \varnothing \}$ の要素数を mod $10^9 + 7$ で求めよ.
解法
$r \in \text{Perm}$, $X \subseteq [1, N]$, $k \in [0, N]$ に対して,次のように書くことにする:
- $S(X) := \{r \in\text{Perm} \mid X \subseteq C(r) \}$
- $R_k := \sum \{ |S(X)| \mid X \subseteq [1, N],\; |X| = k \}$
- $r \downarrow X := r$ の定義域を $X$ に制限したもの
- $\text{Perm}’(X) := \{ r \downarrow X \mid r \in \text{Perm} \}$
- $S’(X) := \{ r \downarrow X \mid r \in S(X) \} = \{r’ \in \text{Perm}’(X) \mid \forall i \in X.\; \text{Coi}(r’(i), i) \} $
包除原理により,求める答は $N! - \sum_{k=1}^{N} (-1)^{k - 1} R_k$ となるから,各$k$ に対する $R_k$ を求めれば良い. また,$|S(X)| = |S’(X)| \times (N - |X|)!$ であるから, $\sum\{ |S’(X)| \mid X \subseteq [1, N],\; |X| = k \}$ を求めれば良い.
集合 $[1, N]$ 上で,すべての $(p_i, q_i)$ を 結んだグラフを考える.どの頂点も次数は2以下である. 連結成分は,自己ループか,サイクルかのいずれかである. 連結成分全体の集合を $\mathcal{Z}$ と書く. $Z\in \mathcal{Z}$ に対して, $Z$内にある辺に対応する番号の集合を $I(Z) := \{ i \in [1, N] \mid p(i), q(i) \in Z \}$ と書く. $S’(X)$ の要素 $r$ は,各連結成分$Z$に, $\sum_{Z \in \mathcal{Z}} t_Z = |X|$ となるように非負整数 $t_Z$ を 割り当てて,$Z$から$t_Z$本の辺に対して端点を選択することによって 決まる.正確には,
- $Q(Z, t) := \{ r \in S’(Y) \mid Y \subseteq I(Z), \; |Y| = t \}$
- $Q(t) := \{ ((Z, r_Z) \mid Z \in \mathcal{Z} ) \mid r_Z \in Q(Z, t_Z),\; \sum_{Z \in \mathcal{Z}} t_Z = t\}$
- $\rho_t : \bigcup \{ S’(X) \mid |X| = t \} \to Q(t), \; \rho(r) = ( r \downarrow I(Z) \mid Z \in \mathcal{Z} )$
と書いたときに,$\rho_t$ が全単射を与える.したがって, $|Q(t)|$ を求めれば良い.
まず,$|Q(Z, t)|$ を求めよう.これは,$t$ にはもちろん依存するが, $Z$ に関しては,そのサイズ $s = |Z|$ にしか依存しないのは明らかであるので, $|Q(Z, t)|$ を $f(s, t)$ と書くことにする.
まず,あきらかに,$ f(1, 1) = 1$であり,$t > 1$ のとき,$f (1, t) = 0$ である. $s >= 2$ については,DP で求める. $Z$ が円環状になっているので,次のように構成する. $I(Z)$ を $\{ x_1, x_2, \ldots, x_s \}$ と, $q(x_{i}) = p(x_{i+1})$ が成り立つように列挙する.
- dp1[i][t][a][b] := 次を満たす r の数: ($a, b \in \{0, 1, 2\}$)
- $ \text{dom}(r) \subseteq \{ x_1, \ldots, x_i \} $
- $ t = |\text{dom}(r)| $
- a = 0: $x_s \not\in \text{dom}(r)$ と矛盾しない.
- a = 1: $r(x_s) = p(x_s)$ と矛盾しない.
- a = 2: $r(x_s) = q(x_s)$ と矛盾しない.
- b = 0: $x_i \not\in \text{dom}(r)$
- b = 1: $r(x_i) = p(x_i)$
- b = 2: $r(x_i) = q(x_i)$
- 初期値
- dp1[0][0][a][0] = 1 (a = 0,1,2)
- dp1[0][1][a][1] = 1 (a = 0,1)
- dp1[0][1][a][2] = 1 (a = 0,1,2)
- 遷移
- dp1[i+1][t][a][0] += dp[i][a][b] (b = 0,1,2)
- dp1[i+1][t+1][a][1] += dp[i][a][b] (b = 0,1)
- dp1[i+1][t+1][a][2] += dp[i][a][1] (b = 0,1,2)
DP実行後,$f(s, t) = dp1[s][t][0][0] + dp1[s][t][1][1] + dp1[s][t][2][2]$ で,$f$ が決定できる. 計算を振り返ってみると,$s$ ごとに別々にDPを実行する必要はなく, 1回のDPを $\max(|Z|)$ まで実行することで, すべての必要な $f(s, t)$ を計算することができる. このDPの計算量は $O(N)$ である.
この準備のもとで,$|Q(t)|$ は,次のDPで求めることができる.
- $\text{dp2}[i][t] := |\{ ((j, r_j \mid j \leq i) \mid r_j \in Q(Z, t_j),\; \sum_{j\leq i}t_j = t \} |$
- 遷移: $\text{dp2}[i][t] = \sum_{s < t} (\text{dp2}[i-1][s] \times f(|Z_i|, t - s))$
このDP実行終了後,$u := |\mathcal{Z}|$ として, $|Q(t)| = \text{dp2}[u][t]$ である. 計算量が心配になるが,遷移の式に現れる積の計算の回数は, $|Z_i| = a_i$ として, $a_1 + a_1 * a_2 + (a_1 + a_2) * a_3 + …+ (a_1 + … + a_{u-1}) * a_u \leq (a_1 + … + a_u)^2 = N^2$ なので,$O(N^2)$ である.